経営セーフティ共済(倒産防止共済)について

中小企業の連鎖倒産などを防ぐための共済制度がある事をご存じですか?今回の記事は、「もしもの時」の備えとしてぜひ知っておいてほしい情報です。

この共済制度は、「中小企業倒産防止共済法」という法律に基づく制度であり、国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」ですが、愛称の「経営セーフティ共済」や略称の「倒産防止共済」「倒産防」の方が多く使われているようです。

「経営セーフティ共済」は、取引先事業者が倒産した際に中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための共済制度です。

まずは、「経営セーフティ共済」のメリットとデメリットについてまとめてみました。

【メリット】

  • 掛金が経費計上できる。
  • 取引先が倒産後、すぐに共済金を借入れることができる。
  • 急に事業資金が必要な場合に、一時貸付金を借入れることができる。
  • 無担保・無保証人で、一時貸付金を借入れることができる。

【デメリット】

  • 解約時の解約手当金は、納付月数が40か月未満の場合は元本割れとなる。
  • 解約手当金は、所得として課税対象となる。
  • 掛金の一部を引き出すことができない

次に、加入条件から掛金、共済金、一時貸付金、解約・解約手当金について順に説明していきます。

1.加入条件について

条件1.国税(法人税や所得税)の滞納がないこと

条件2.中小企業倒産防止共済の既契約者ではないこと(重複加入はできません)

条件3.1年以上事業を継続して行っている中小企業者で、次の要件に該当する方

  • 個人の事業主または会社で下表の「資本金等の額」または「従業員数」のいずれかに該当する方

  • 企業組合、協業組合
  • 共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

―――注意事項―――

  • 上記の条件を満たしていても、「事業にかかわる経理内容が不明」などの理由により加入いただけない場合も有ります。
  • 売掛債権等が生じない、一般消費者を取引先とする事業者、金融業者、不動産業者などの業種は、共済金の借入れの対象とならない場合が有りますので、加入に際してご注意ください。

詳しくは、中小機構HPをご覧ください。【中小機構 加入資格】

2.掛金について

掛金は、法人の場合は損金に、個人事業の場合は必要経費に算入できるので節税対策としても有効です。ただし、個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)には、掛金の必要経費としての算入が認められませんのでご注意ください。

①掛金月額

掛金月額は、5千円から20万円までの範囲内(5千円単位)で自由に選べ、加入後も掛金月額は増額・減額ができます。ただし、減額には一定の要件が必要です。

②掛金の限度額

掛金総額が800万円になるまで積み立てられます。

③掛金の前納

掛金は前納できます。前納すると1月につき0.0009%の割引があります。なお前納掛金は、応答月が来てはじめて掛金として取扱いされます。

④掛金の掛止

掛金総額が掛金月額の40倍以上に達している場合、掛止め(掛金の払い込みを止める)ができます。また、共済金の貸付を受けた場合も6か月間、掛止めができます。

⑤掛金の納付方法

毎月の掛金は、預金口座からの振替による払い込みとなります。

振替日は、毎月27日(休日の場合は翌営業日)です。

詳しくは、中小機構HPをご確認ください。【中小機構 掛金】

3.共済金について

取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合に、共済金の借入れが受けられます。

3-1 倒産の定義

本制度における「倒産」とは、取引先事業者が次のような状態であるときを指します。

―――注意事項―――

  • 「夜逃げ」は、本制度の「倒産」には該当しません
  • 倒産日から6か月を経過した場合には、共済金の貸付手続きを行うことは出来ません

 3-2 共済金の借入条件

①共済金の借入額は、被害額(回収困難となった売掛金債権等の額)と掛金総額(前納掛金は除く)の10倍に相当する額のいずれか少ない額を上限とし、その範囲内で請求した額となります。

②借入額は原則、50万円から8,000万円で5万円単位の額となります。

③「無担保・無保証人」

④「無利子」 ただし、借入れを受けた後は、借入額の10分の1に相当する額が積み立てた掛金総額から控除されます。

次の図で確認してみましょう。

⑤償還期間および償還方法

6か月の据置期間の後、共済金の借入額に応じて5年から7年(据置期間6か月を含む)で毎月均等償還となります。なお、返済期日までに共済金の返済がないと、年14.6%の違約金が課せられます。

―――注意事項―――  

次のようなときは、貸付を受けられません。

  • 取引先事業者の倒産が、加入後6か月未満に生じたものであるとき
  • 加入から取引先事業者の倒産日までに、6か月分以上の掛金を納付していないとき
  • 共済金の借入の手続きが、取引先事業者の倒産日から6か月を経過した後になされたものであるとき
  • 共済金の借入時に共済契約者が中小企業者でないとき

共済金の借入れには他にもいくつかの条件が有ります。

詳しくは、中小機構HPをご確認ください。【中小機構 共済金】

4.一時貸付金について

取引先事業者が倒産していなくても、共済契約者が臨時に事業資金を必要とする事態が生じた場合に、解約手当金の95%を上限として一時貸付金の借入れを受けることができます。

貸付条件

  • 借入限度額  : 掛金納付月数に応じ次表のとおりとなります。
  • 借入額    : 30万円以上で5万円単位
  • 借入金の使途 : 事業資金(運転・設備)
  • 返済期間   : 1年
  • 償還方法   : 期限一括償還
  • 利率     : 有利子(金融情勢に応じて変動します)
  • 利息支払方法 : 借入れの際に一括前払い
  • 違約金    : 年14.6%
  • 担保・保証人 : 不要

詳しくは、中小機構HPをご確認ください。【中小機構 一時貸付金】

5.解約と解約手当金について

解約する場合、掛金を12か月分以上納付した方には解約手当金が支給されます。解約手当金は、解約の理由や掛金の納付月数によって支給率が変わります。

5-1 共済契約の解約

1.任意解約

契約者が任意でいつでもできる解約(一部解約はできません)

2.みなし解約

契約者(個人事業主)の死亡や、法人(会社)の解散・分割(その事業の全部を承継させるものに限る)、事業全部譲渡のときは、その時点で解約されたものとみなす。ただし、共済契約の承継が行われたときは解約になりません。

3.機構解約

12か月分以上の掛金の滞納をしたとき、または共済金の貸付などに不正行為があった場合に機構が行う解約

5-2 解約手当金

下の表の解約の種類、掛金納付月数の該当する率を掛金総額に乗じた額となります。

  • 納付月数が12か月未満の場合は、掛け捨てとなります。
  • 不正行為による機構解約の場合は、解約手当金は支給されません。
  • 共済貸付金・一時貸付金の借入残高がある場合は、解約手当金からこれらの額を差し引いて支給されます。

解約手当金は所得として扱われるため課税対象となります。法人の場合は解約した時点での益金の額、個人の場合は事業所得の収入金額に算入することになります。

まとめ

「40か月掛けたら損はなし」

掛金納付月数が40か月以上なら、掛金総額の100%が戻ってきます。いつ起こるか分からない「もしもの時」の備えの一つとして、また、節税対策の一つとして「経営セーフティ共済」への加入を検討してみてはいかがでしょう。

加入方法や制度の詳しい内容については、中小機構HPをご覧ください。

【中小機構 経営セーフティ共済】