民事信託とは、自分の大事な財産をどのように管理・運用し、誰のために活用するのかを柔軟に設計できる制度です。初めて耳にした方にもわかりやすく、複数回に分けて解説いたします。
・信託とは?
委託者が自分の大切な財産を信頼できる受託者に移転し、委託者が決めた信託目的(誰のために、どのような目的で財産を活用するのか)に沿って受益者のために受託者に管理、活用してもらう制度を信託といいます。信託は主に次の4つの目的で利用されます。
①資産運用
②資産管理
③資産承継
④社会貢献
信託は「民事信託」と「商事信託」に分けることができますので、今回は「民事信託」についてご説明します。
・民事信託とは?
信託銀行や信託会社を受託者としてビジネスで投資や資産の流動化のために行われる商事信託に対し、2007年9月の信託法の改正により、銀行や信託会社にしか認められていなかった信託を家族などの一般人が代わって財産の管理・承継を行うことが可能となりました。これが「民事信託」です。
民事信託のなかでも、信頼できる家族が受託者になる場合には「家族信託」とも呼ばれます。
一方で、「成年後見制度」という制度があります。
この制度は、認知症・知的障がいなどの理由で判断能力が不十分の方の代わりに後見人が財産管理などを行い、不利益を被らないように法的に支援する制度です。後見人は家庭裁判所で選任され、様々な権利が与えられるため指定された高度な注意業務が課されます。
一見すると似ている制度ですが、成年後見制度は本人のためのみの制度であるため、例えば親族がこうしてほしいと望んだ事でも本人のデメリットになるならその行為を行うことはできません。
一方、民事信託では信託目的の範囲内であれば自由に管理・処分が行えるため、成年後見制度と比べると自由度が高いとされています。
それぞれの制度にメリットとデメリットがありますが、民事信託を成年後見制度や遺言などに代用、もしくは併用することで、成年後見制度や相続のデメリットを解消し、より自由な財産管理、承継の仕組みを構築することができます。
次回以降は上記の内容を踏まえて民事信託の活用方法についてお話させていただきます。