事業主の皆様、給与と外注費の違いで悩まれたことある方が多いのではないでしょうか。給与で処理するよりも外注費で処理をしたほうがメリットの多いというのは分かっていても、何を基準に外注費と判断するのでしょうか。給与判断基準をすぐに明確には答えることは難しいと思います。具体的な事例をもとに考えていきましょう。
目次
1.給与とは
給与とは雇用契約もしくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務の提供の対価です。つまり、雇用主が従業員に支払う労働への報酬であり、残業手当などの諸手当も含めた会社からのすべての報酬です。月収として毎月定期的に支払われ、給与支給時に所得税の源泉徴収を行います。消費税の課税区分は「不課税」となります。従業員の雇用形態は社員のみならず、アルバイト、パートなど様々あります。社会保険については被保険者になるため加入義務があり、労使折半で負担します。
2.外注費とは
外注費とは会社の業務の一部を委託する業務委託契約書や請負契約もしくはこれに準ずる契約に基づき、外注先の企業や個人事業主が実現した業務への対価です。源泉徴収は原則不要です。(源泉税の徴収義務のある報酬に該当する場合を除く。国税庁HP参照:https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/2792.htm)消費税の課税区分は「課税仕入」となります。そのため支払った消費税分が、納める消費税から控除されます。社会保険については被保険者にならないため加入義務はなく、負担は生じません。
3.給与と外注費
3-1給与と外注費の判定基準
給与と外注費の判定基準としては「契約」と「業務実態」など客観的に判定します。一定の基準であり、明確な線引きではありません。
3-1-1「契約」
契約形態により外注費か給与か分かれますが、請負契約→外注費、雇用契約→給与となります。請負契約とは民法で当事者の一方(請負者)がある仕事を完成し、相手方(注文者)がその仕事結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約を言います。雇用契約とは民法で当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することを内容とする契約を言います。
3-1-2「業務実態」
外注費の「業務実態」の判断基準として、国税庁HP 消費税法基本通達にある4項目があげられます。
国税庁HP参照 消費税法基本通達:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利 として 既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
では下記に具体的に説明していきたいと思います。
(1)その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。 → YESなら外注費、NOなら給与
<外注費>
- 他人(下請けや従業員の第三者)が代行して業務を遂行できる。また役務を提供することが認められる。つまり、契約者以外が仕事を行っても、その完成物に対価が支払われる。
<給与>
- 当人にしか遂行できない業務である。つまり、仕事の代替が認められていない。
(2)役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
→ YESなら給与、NOなら外注費
<外注費>
- 成果物に対しての報酬。
- 自己の責任において裁量を持って仕事をしている。
- 自ら請負金額を計算し、請求書を発行している。
- 自己の計算と危険において、独立して営まれている。
<給与>
- 労働時間に対しての報酬。(報酬の支払者から作業時間を指定される。)
- 勤務時間が管理されている。(時間を単位として計算されるなど時間的に当人が拘束されている。)
- 指示された作業をしている。
- 継続的ないし断続的に労務または役務の提供がある。
- 通勤手当や食事代等が他の使用人の規定に準じて支給されている。
(3)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利 として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
→ YESなら給与、NOなら外注費
<外注費>
- 成果物を渡さなければ報酬を請求できない。請負側がリスクを負います。
<給与>
- 労働時間を基準として支払うため請求できる。
(4)役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
→ YESなら給与、NOなら外注費
<外注費>
- 経費(費用)を自己負担している。
<給与>
- 経費(費用)を会社負担している。
※経費具体例:材料、用具、工具
消費税法 基 本 通 達 |
外注費 | 給与 | |
契約 | 請負契約 | 雇用契約 | |
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。 | YES | NO | |
①他人が代替して業務を行える、役務を提供することが認められる。 | ①当人にしか遂行できない業務。 | ||
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。 | NO | YES | |
①成果物に対しての報酬。 | ①労働時間に対しての報酬。 | ||
②事故の責任において裁量を持って仕事をしている。 | ②勤務時間が管理されている。 | ||
③自ら請負金額を計算し、請求書を発行している。 | ③指示された作業をしている。 | ||
④自己の計算と危険において、独立して営まれている。 | ④継続的ないし断続的に労務または役務の提供がある。 | ||
⑤通勤手当や食事代等が他の使用人の規定に準じて支給されている。 | |||
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。 | NO | YES | |
①成果物を渡さなければ報酬を請求できない。 | ①労働時間を基準として支払うため請求できる。 | ||
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。 | NO | YES | |
①経費を自己負担している。 | ①材料や用具の用意を会社負担している。 |
3-2給与と外注費の費用メリット比較
外注費は源泉徴収税がなく、本則課税での消費税計算を採用していれば、仕入税額控除により消費税の納付も抑えることが出来、また社会保険料の負担もありません。一見、外注費で処理をしたほうが有利に見えます。しかし、本来は給与で処理すべき場合に外注費で処理をしてしまうと、税務調査時に追徴課税になります。外注費となる判定基準を見てみましょう。
4.税務調査時に外注費処理を給与と判断された場合にかかる追徴課税
3.でも述べたとおり、本来は給与で処理すべきところを外注費で処理をしてしまい、税務調査時に給与とされると追加徴税となります。その年1年分だけでなく過去にもさかのぼり徴収される可能性があります。そうなると莫大な金額となりますので、くれぐれもこのようなことが起きないようにしたいです。
①外注費にかかる消費税の仕入税額控除の否認
外注費は課税の為、消費税の控除ですが、給与は不可税の為、消費税の控除となりません。つまり外注費にかかっていた仕入消費税は給与となることで不課税となるので、控除されていた仕入消費税分はそのまま追徴課税額となります。
②源泉所得税の徴収
外注費は原則源泉所得税の対象ではありませんが、給与が源泉所得税の対象となります。つまり給与となった分の源泉所得税は徴収漏れという扱いになり、追徴課税額とされます。
③延滞税、加算税の支払
上記の追徴税額に加え、過少申告加算税、不納付加算税、延滞税も課税されます。
5.まとめ
給与と外注費には絶対的な線引きがないため、判断が曖昧で難しいです。税務調査時に判断がひっくり返らないように慎重に判定していきましょう。