会社設立ガイド|新会社を設立したときの全手順と全知識

会社設立をしようと思っているけれど、具体的に何から手をつければ良いのか分からないとお悩みの方も多いことでしょう。今回弊社で別の事業会社を起こすことになり、実際の流れを記録しました。

税理士事務所の持っている知識を活かして会社設立したのでこれから会社を新設しようと思う方のご参考になればと思います。

1.会社設立の流れ

会社を設立するにあたり、親しい司法書士に依頼しました。

  1. 10月頃    会社設立案が発生
  2. 12/5     司法書士と打ち合わせし、会社設立への具体的行動開始
  3. 12/12    登記申請=会社設立日
  4. 12/17    登記承認
  5. 12/19    銀行へ法人口座開設依頼
  6. 12/25    税務署、県税事務所、市役所へ法人設立届出書を提出
    ※青色申告、給与支払事務所の開設等届出を提出
    ※源泉の特例納付の届出書を提出
    ※社会保険、労働保険、雇用保険の届出書を提出

上記の流れで会社を設立しました。会社の設立日は法務局に登記申請書類を提出した日のため、弊社の場合は12月12日が会社設立日となります。つまり実質約1週間で会社設立の手続きができました。

では具体的にどのようなことをしていったか記していきたいと思います。

2.会社設立

弊社はこの時点から司法書士と相談しながら進めました。個人でも設立は可能ですし、司法書士や税理士は信頼関係が大事ですのでこの時点で無理して入れることもないと思います。しかし最初に会社の方向性を付けることは大切なので信頼のおける司法書士や税理士にこの時点で頼んでもいいと思います。

2−1.会社設立準備(12/5~)

・印鑑の作成

印鑑は会社設立時に最低2本必要です。代表者印と銀行印です。

他に住所ゴム印と角印も後々使う機会が出てくるので4本セットで安く手に入るならば一緒に用意してもいいと思います。弊社はインターネットで探して購入しました。

・設立項目の決定

会社を設立するにあたって以下のことを決めました。以下のチェックシートをもとに一項目ずつご説明していきたいと思います。自身で設立する際には漏れがないように添付のチェックシートを埋めてみてください。

会社設立チェックシートダウンロードexcel

1 商号  
2 本店所在地  
3 機関設計

取締役会・・・設置  ・  非設置

監査役 ・・・設置  ・  非設置

会計参与・・・設置  ・  非設置

4 公告 官報  ・  電子公告
5 譲渡制限 全て  ・  無
6 株券発行 不発行  ・  発行
7 代表取締役の選定 取締役会  ・  定款  ・  定款に基づく取締役の互選  ・  株主総会
8 役員人数

取締役員数         名以内  ・  以上

監査役               名以内

9 設立年月日 平成27年  月  日
10 定款 電子定款  ・  書面定款
11 会社の目的

12 資本金

計                 円

一株                円

合計株数          株

13 出資者

氏名

住所

出資額

14 役員

代表取締

役取締役

監査役

15 役員任期                  年
16 出資金払込機関 有                         銀行  ・  信用金庫     支店無
17 事業年度 (自)     月     日   ~(至)     月     日
18 口座                         銀行  ・  信用金庫     支店
19 会計処理方法 現金出納帳  ・  銀行帳  ・  総勘定元帳
20 請求書フォーマット 有  ・ 無
21 会社のHP URL:

①商号

今後を共にする会社名ですので分かりやすく、また愛着をもてる名前がいいと思います。また、競合他社で同名の会社があると会社が成長し、検索される回数が増えた際に顧客が混乱してしまう場合がありますので避けたほうがいいでしょう。また使用できる文字等制限がありますのでご注意ください。

法務省HP:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html

②本店所在地

定款を作る際に会社本社住所が必要となります。自宅で始めるか、新たにオフィスを借りる予定か、バーチャルオフィスにするか等の選択肢があります。

*バーチャルオフィスの場合特に取引上のデメリットが多いので、自宅住所を知られることで不利益が被る可能性がある方以外はお勧めしません。

③機関設計

機関設計とは代表取締役、取締役、監査役、会計参与など、会社にどのような機関を置くか決めることです。

  • 代表取締役・・・会社を代表する人
  • 取締役  ・・・会社の運営方針を決定する人
  • 監査役  ・・・会社の運営が適切に行われているか監督する人
  • 会計参与 ・・・会社の会計、計算書類を作成する人

機関設計は様々なパターンが考えられますが、ポイントは取締役です。出資者が多く株主(判断者)が多い場合は取締役会を設置したほうがいいでしょう。メリットは株主総会を開かずに取締役会で決議でき、経営判断が早くなります。出資者が少なく、株主(判断者)があなただけもしくは身内のみの場合は取締役会を設置しなくてもいいでしょう。

*監査役は⑤で決めた非公開会社か公開会社かによります。非公開会社の場合設置しなくてもいい、公開会社の場合例外なく設置しなければいけません。

*会計参与は任意設置です。

④公告

公告とは国または公共団体がある事項を広く一般的に知らせることです。方法は官報・新聞への掲載やインターネットなどの文書によります。

官報:国が発行する小冊子

新聞への掲載:日本経済新聞など

電子公告:インターネット広告

⑤譲渡制限

会社の承認を必要とし全ての株に譲渡制限している場合は非公開会社で会社の承認を必要とせずに株式を自由に譲渡できる場合は公開会社となります。ほとんどの中小企業は株式譲渡制限会社です。

⑥株券発行

株式会社においては原則不発行です。株券発行する場合は定款で定める必要があります。

⑦代表取締役の選定

代表取締役は下記の通り選定します。

  1. 取締役会設置会社の場合 ・・・取締役会
  2. 取締役会非設置会社の場合・・・定款・定款に基づく取締役の互選・株主総会

⑧役員人数

取締役が最低1名以上必要です。

⑨任期

⑤で決めた非公開会社か公開会社かによります。非公開会社の場合最長10年、公開会社の場合最長2年となります。

⑩設立年月日

登記の申請日が会社設立年月日となります。

⑪定款

定款の作成方法は後程ご説明します。定款を電子定款にする場合、書面定款に比べ収入印紙代4万円を節約できますが、特別な機器が必要となります。そのため書面定款にて申請する場合が多いです。

⑫会社の目的

会社がどんな事業を行うかを定款に記載し、登記します。事業目的は取引先にとってあなたの会社がどんな事業を営んでいるかを見て判断する重要な材料となります。

また、事業目的の内容もさることながら、登記手続上問題ない表現を具体的にすることもポイントとなります。ご自身で手続される場合は十分に検討してください。

⑬事業年度

日本の多くの企業は期首を4月、期末を翌3月にする場合が多いですが、自由に設定することが可能です。消費税免税期間や売上の多い時期、棚卸の少ない月、仕事上あまり忙しくない時期、税理士からアドバイス受けやすい時期を考えて決めましょう。事業年度は会社を運営する上でとても重要です。

⑭資本金

株式会社を始めるために必要な元手となる資金です。株式を発行することで集めた資金で多ければ多いほど業務に使えるお金が多いということになり「体力のある会社」としてみなされます。

現在、資本金は1円からでも会社設立出来ますが後々の借入等を考えて適切な額面のほうがいいです。下記の5点に注意して適切な額を考えてみてください。

  1. 運転資金として約半年程度の必要経費が支払える額面であるかどうか。
  2. 極端に資本金が少ないと債務超過に陥りやすい等、信用性を低く見られがちである。
  3. 資金調達の面から考える。金融公庫からの融資は資本金と同額程度しか借りられない。
  4. 許認可を取る必要がある業種の場合、条件を事前に確認する。
  5. 資本金1000万円以下の場合、2年間消費税の納税義務が免除される。

⑮一株当たりの金額

資本金÷株式発行数となります。原則定款で決めた発行可能株式総数より株数を変更しないので、1株の価格がいくらであっても大きな影響はありません。

⑯出資者・住所・出資額内訳

誰がいくら出資するかを決めます。出資額は1株の金額×株数で計算されます。出資額により決議での決定権の裁量が変わりますので自分以外の出資者がいる場合には注意が必要です。

⑰出資金払込機関

会社の口座は登記完了後でなければ作成できないため、出資金を出資者に払い込んでもらう金融機関を決めましょう。代表取締役となる個人の預金通帳に振り込む場合が多いようです。個人の通帳に出資金を振り込んでもらうため、下記のことに気を付けましょう。

  • 定款の認証後に行う
  • 振込金額と氏名が明確にわかるようにする
  • 資本金だと分かるように通帳残高をゼロにした状態で入金があると尚良い

⑱口座

登記完了後に行います。銀行口座の開設にあたって用意するものは下記通りです。

  • 各銀行の口座開設依頼書
  • 銀行印
  • 法務局へ届けた代表者印
  • 印鑑証明書
  • 登記簿謄本のコピー
  • 定款
  • 身分証明書のコピー(例えば免許書であったら両面)

法人の場合、通帳のみでキャッシュカードは管理上の問題で作らない場合が多いです。

最近は口座開設時に0円で作ることが可能な金融機関が増えてきました。この際に銀行に法人名入りの引出用紙、振込用紙を作成してもらうと書く手間が省略出来て便利です。ただし作成してくれるかは銀行によります。

当座預金について詳しく知りたい方はこちらへどうぞ。

⑲会計処理方法(財務管理、申告方法)

会社設立後どのように現預金を管理するか、どう会社を運営していくか考えましょう。

*現金出納帳の書き方について詳しく知りたい方はこちらへどうぞ。

⑳請求書フォーマット

会社設立後、多くの場合すぐに取引が始まると思います。出来る準備はできるだけ早く行いましょう。

*請求書の書き方について詳しく知りたい方はこちらへどうぞ。

㉑会社のHP

昨今のネット社会において会社のHP作成は欠かせないでしょう。事業内容が分かるような会社のHPを用意することをお勧めします。レンタルサーバーと契約しドメインを取得しましょう。

*⑲~㉑は登記するのに約2週間かかるのでその間に考えるといいと思います。

2−2.書類作成の流れ

2−2−a.定款

・定款の作成/認証(12/5~)

定款とは・・・会社の基本規則や内容を記録したものです。「会社の憲法」と呼ばれることもあり、会社の設立手続き上必ず作成する必要があります。

・定款の作成

定款は書面定款と電子定款があります。また取締役会を設置するかしないかにより記載内容が変わります。

・定款の認証手続き

*この時点で司法書士がついていたら代行してもらえます。

定款作成後、公証人役場で「定款の認証」をしてもらいます。これは定款が正しく作られたものであることを第三者に証明してもらう為です。公証人役場に下記書類を提出します。

定款3通(公証人役場保存用、会社保存用、登記用)
発起人全員の印鑑証明書1通ずつ
収入印紙:4万円
公証人へ支払う手数料:5万円(現金)
定款の謄本交付手数料:250円×ページ数
委任状(代理人が定款認証を行う場合)

2−2−b.登記

・登記書類一式の作成(12/5~)

登記を行うには各種申請書作成の必要があります。

定款
資本金の払込証明書
発起人の決定書
設立時役員の就任承諾書
印鑑証明書
株式会社設立登記申請書
登録免許税貼り付け台紙(株式会社の場合、資本額の1000分の7)
登記すべき事項を保存したCD-Rまたはフロッピーディスク
印鑑届出書

・会社設立登記(12/12~)

・設立登記の申請

申請方法は3種類あります。

・法務局に行く

・郵送

・オンライン

それぞれメリット・デメリットがありますので事前に注意点を調べてから適した方法を選んでください。登記は申請後約1週間程度で完了します。申請手段にもよりますが、原則登記完了の連絡は来ませんので自身で法務局に確認しましょう。

また登記完了後に登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しておきましょう。銀行口座の開設、税務署への各種届出等を考え3通は取得するといいです。

法務省HP:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/goannai_index_syougyou.html

2−2−c.各種開業の届出書等の作成(12/19~)

登記申請し、会社設立後に行うべき書類作成、申請は下記のとおりです。

※この時点で税理士がついていたら代行してもらえる部分もあります。

(届出事項)

国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm

法人名の銀行口座の開設(銀行)
法人設立届出書(税務署・県・市)
青色申告の承認申請書(税務署)(任意)
給与事務所等の開設届出書(税務署)
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署)
社会保険(年金事務所)
労働保険(労働基準監督署)
雇用保険(ハローワーク、公共職業安定所)
棚卸資産の評価方法の届け出書(税務署)(任意)
減価償却資産の償却方法の届け出書(税務署)(任意)

(作成必要書類)

法人設立時の事業概況書
賃金規定
就業規則

②法人設立届出書(税務署・県・市)

本店の場所、納税地、代表住所の届出書を提出します。

(必要書類)

  • 定款の写し
  • 登記事項証明書(原本)
  • 出資者(株主)の名簿
  • 設立時の貸借対照表
  • 法人の事業概況書

③青色申告の承認申請書(税務署)

様々なメリットがありますので申請することをお勧めします。

国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm

④給与事務所等の開設届出書(税務署)

役員報酬や給与を支払う法人は提出します。

⑤源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署)

源泉所得税は原則毎月翌10日までに納付ですが、給与の支給人員が常時10人未満である場合、年に二回1-6月分を7月10日、7-12月分を翌年1月20日にまとめて納付できるようになります。

⑥社会保険(年金事務所)

日本年金機構HP:http://www.nenkin.go.jp/pamphlet/shakaihoken.files/0000000011_0000011201.pdf

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150311.html

 

⑦労働保険(労働基準監督署)

厚生労働省HP:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/980916_1.html

⑧雇用保険(ハローワーク、公共職業安定所)

厚生労働省HP:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/koyouhoken/

2−3会社設立完了(~12/25)

2−2−Cの各届出書が認証され、会社設立完了となります。今後は会社運営、助成金の申請等を考え経営していきましょう。

3.会社設立登記にかかる費用のめやす

自身で会社設立手続きを行った場合:約25万円

→内訳

<定款認証時にかかる費用>

  • 定款認証手数料:50,000円
  • 印紙代:40,000円(書名定款)
  • 定款紙謄本の交付手数料:1ページ250円×必要枚数(約4枚)

<登記申請時にかかる費用>

  • 登録免許税:150,000円((資本金額×0.007%が15万円以下の場合は一律15万円となります。)

<登記簿謄本などの取得費用>

  • 登記簿謄本:1通1,000円×必要枚数(約4枚)
  • 会社の印鑑証明書:1枚500円×必要枚数(約2枚)

<印鑑代>

  • 代表者印、銀行印:ネットで注文して約5,500円

司法書士、税理士に依頼した場合:約35万円

→内訳

<報酬費用>

  • 司法書士、税理士:100,000円(*士業の報酬額は事務所によります。)

<定款認証時にかかる費用>

  • 定款認証手数料:50,000円
  • 印紙代:40,000円(書名定款)
  • 定款紙謄本の交付手数料:1ページ250円×必要枚数(約4枚)

<登記申請時にかかる費用>

  • 登録免許税:150,000円(*資本金額×0.007%が15万円以下の場合は一律15万円となります。)

<登記簿謄本などの取得費用>

  • 登記簿謄本:1通1,000円×必要枚数(約4枚)
  • 会社の印鑑証明書:1枚500円×必要枚数(約2枚)

<印鑑代>

  • 代表者印、銀行印:ネットで注文して約5,500円

この他に資本金、その他諸費用が必要となります。

4.設立最中に悩んだこと

弊社が会社設立を行うに当たり悩んだポイントは下記の3点でした。手続き上のことは調べ時間をかければできますが、正解のないことを決める際にとても悩みました。

  • 会社の商号
  • 会社の目的を登記上にあった文章にすること※弊社は司法書士に依頼していたため、言い回しを修正してもらいました。
  • 決算期

同業他社を参考に考えました。

5.株式会社を作るメリット・デメリット

メリット

  1. 社会的な信用度が高い。・・・法人に限られている取引にも参入できる
  2. 資金調達や融資の選択肢が広がる
  3. 節税手段が増えるなど税法上のメリットが大きくキャッシュフローを考える方法が増える

デメリット

  1. 社会保険料の事業主負担が増えます。
  2. 設立当初や設立後に手続きが多く、費用も掛かる
  3. 赤字でも必ず法人税7万円を納める必要があります

株式会社を設立したほうがいいか合同会社や個人事業主でもいいかを検討してください。

6.まとめ

最初に読んでいただいた通り会社設立の手続き自体は約一週間でできます。初めてのこと聞きなれないことは難しく感じやすいですが、順を追って手続きすれば設立することはどなたでも可能です。(もちろん容易ではありません)まずは本当に株式会社を設立する必要があるかを考え、法務、税務、営業、資金繰り、事務等の幅広い知識を蓄え設立した会社をしっかり経営していきましょう。そしてこのページを読んでくださった方は必ず会社設立にかかった費用の領収書をすべて漏れなく保存してください。これは会社の経費になります。会社設立時からあなたの会社経営は始まっています!

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