民事信託とは、自分の大事な財産をどのように管理・運用し、誰のために活用するのかを柔軟に設計できる制度です。初めて耳にした方にもわかりやすく、複数回に分けて解説いたします。今回は民事信託のメリット、手続きの流れについてお話いたします。
目次
民事信託のメリットを一部紹介
財産の管理を自由に決められる
委託者、受託者、受益者の三者が合意していれば、制限が設けられている項目以外は利用方法や誰のために、など自由に財産管理の内容を決められます。例えば、遺言では相続した後に相続された人が次に誰に資産を渡すかを決める事ができませんが、民事信託では自分が生きている間に信託契約で次の受託者を指定する事ができ、自由な財産管理の仕組みを構築できます。
不動産の管理を一人に集約できる
土地などの不動産を相続することにより、不動産が複数の相続人の共有状態になることがあります。共有状態になっていると、何かをしようとした際には共有者全員の同意(実印の押印等)が必要になり、一番良いタイミングでの有効活用が出来なくなるリスクがあります。しかし、信託契約で不動産の受託者を事前に指定しておくと複数人の共有状態になるリスクを回避できます。
この他にも民事信託には様々なメリットがあります。
民事信託スタートまでの流れ
それでは、実際に民事信託スタートまでどのような流れなのか説明致します。
信託内容の決定
まずは信託契約書に定める内容を決定します。
決定しておくべき内容は、信託契約の当事者(委託者、受託者、受益者)、信託契約の目的、信託財産、信託財産の運用及び処分方法、委託者の権利の扱い、受益者が複数の場合の意思決定方法、信託契約の変更方法、信託の終了事由、残余財産の帰属、信託報酬などです。
信託契約書の作成
法律上では口頭でも成立しますが、後日、契約内容や締結の事実が不明確になる恐れがあるため、必ず契約書を作成しておきましょう。なお、信託口口座を開設する際に公正証書で作成した信託契約書を求められる事が多いため、公正証書にしておいたほうが安心です。
不動産の名義変更手続き
信託財産に不動産がある場合には登記手続きを行い、不動産の名義を受託者に変更する必要があります。司法書士に依頼して手続きを行うのが一般的です。
信託管理用口座の開設
預貯金や上場株式などの金融資産については受託者個人の財産と信託財産を分別して管理しなければならないため、金融資産の管理専用の口座を信託口口座として開設する必要があります。信託口口座でないと相続で凍結されてしまう可能性があるため、事前に金融機関に信託口口座を開設できるか確認しましょう。
民事信託のスタート
次回以降は民事信託と各税目での対策についてお話させていただきます。