今、知りたい!新しい会社形態【合同会社:LLC】とは

あなたは、合同会社を知っていますか?株式会社や合名会社、合資会社との違いは何でしょう?

特にこれから会社の設立を考えている方に知っていただきたい情報です。

合同会社(LLC)とは、2006年の会社法改正に伴い新しく設けられた会社形態です。株式会社に比べ設立費用が安く抑えられる等いくつかのメリットが有るため、近年設立される会社で選ばれることが急増している会社形態です。特筆すべき点として出資者全員が「間接有限責任社員」となり構成され、かつ「定款自治」により会社組織や規定を比較的自由に作ることができる会社だと言う事です。今回は、合同会社の「メリットとデメリット」から「有限責任」と「無限責任」、「定款」そして「設立までの流れ」について書いています。

株式会社の設立については、こちらの記事をご覧ください。『 会社設立ガイド|新会社を設立したときの全手順と全知識

1.いろいろな会社形態について

会社形態としてすぐ出てくるのは「株式会社」ですが、それ以外にも「合資会社」「合名会社」「合同会社」等が有ります。有限会社は、2006年(平成18年)5月1日新会社法の施行により新設はできなくなり、現在は株式会社の特例として扱われ「特例有限会社」と呼ばれています。

会社形態による違いをまとめた表をご覧ください。

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表の4つの会社形態はいずれも法人格があり(会社法第3条)、設立後は法人税、法人事業税、法人住民税、消費税等の税金が課税されます。

 2.合同会社のメリット・デメリットについて

メリット

  • 出資者全員が間接有限責任社員である。これは合資会社や合名会社との大きく違うところです。
  • 1人でも設立できる。
  • 株式会社に比べ、設立費用が少なく手続きも簡単である。
  • 法人格が存在する
  • 決算公告の義務がなく、毎年の決算時に決算報告を公告(公表)しなくて良い。ただし、将来的には義務化の可能性が有ります。
  • 出資者(社員)が経営の主体であるため意思決定が迅速にできる
  • 定款自治であり、会社法に違反しない限り会社の組織や社内規定を定款で自由に設計することができる。
  • 利益や権限の配分を出資額に関係なく決定できる。(資金は多く出していないが、技術や知識等の提供をしている方の配分を考慮するなど)
  • 出資者(社員)全員の同意があれば、株式会社へ組織変更することも可能である。(変更に伴うコストは掛かります)

デメリット

  • まだ社会的認知度が低い。合資会社や合名会社と混同されることや、相手先によっては取引を制限される可能性もある。
  • 社長に当たる代表者の名称は「業務執行社員」「代表社員」で、「代表取締役社長」「取締役」の肩書を使うことができない。(社内的な名称として、「社長・代表・CEO」などの使用は可能です。)
  • 利益や権限の配分決定が難しい。また配分についての不満が出てきて社内で対立が起こる可能性がある。
  • 社内(社員)で揉め事や対立が起こると、意思決定が遅れたり出来なくなる可能性がある。
  • 経営状態が悪く赤字になったとしても、法人住民税(注4)の支払いが毎年必要となる。

(注4)各自治体により税額が異なります。 横浜市の法人住民税均等割:74,500円(平成28年9月現在)

その他

● 厚生年金等の社会保険への加入義務が有ります。

3.有限責任と無限責任について

有限責任と無限責任の違い、それは事業が破綻・倒産などになった場合に、「出資者が、どこまで責任を負うのか」の違いなのです。

「無限責任」

  • 会社の債権者に対して全ての責任を無限に負うこととなります。会社として全債権を支払うことができない場合には、個人の財産をも支払いに充てなくてはなりません。
  • 無限責任を負う方は、債権者へ直接弁済を行う責任を負うので「直接責任」または、「直接無限責任」と言われます。

「有限責任」

  • 会社の債権者に対して、出資額までを限度として責任を負うこととなります。出資額を超えた債権が有ってもそれ以上の責任を負うことは無いということです。
  • また株式会社の出資者(株主)などは、債権者への責任を直接負うのではなく出資先の会社に出資額分の責任を負うこととなり、債権者へは間接的に責任を負うので「間接責任」または、「間接有限責任」と言われます。

※個人事業主や民法組合は、無限責任を負う形態となります。また、株式会社でも中小企業が融資を受ける際、オーナー社長は個人保証を求められる場合が有ります。この場合は事業が破綻・倒産などの場合に、社長個人が会社の借金を負うことになってしまいます。有限責任と言われている株式会社でも中小企業のオーナー社長は事実上無限責任を負ってしまうことが多くあります。

4.定款について

定款とは、「会社の組織や運営等に関する根本規則」です。”会社のルールブック”や、”会社の憲法”と言った方が解りやすいでしょうか。

定款は、会社設立の際には必ず作成しなくてはいけないもので、その記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項が有り、会社形態によって異なる部分が有ります。今回は「合同会社の定款」について説明します。

絶対的記載事項(会社法576条1項)

次の6項目のうち、1つでも記載に不備や漏れが有ると定款が無効となってしまう可能性があります!

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相対的記載事項(会社法577条)

定款に記載することで効力が発生する事項です。全社員の同意が有っても、定款に記載されていなければ「効力無し」となってしまいます。次のような事項が挙げられます。

 ①業務執行社員の定め、②社員の定め、③社員の退社自由の定め、④存続期間の定め、⑤解散事由、
 ⑥就業取引の許容、⑦解散の場合における財産の処分方法の定め、⑧代表清算人の定め

任意的記載事項(会社法577条)

上記の記載事項以外の事項です。法律に反しない限り自由に規定でき、定款に記載しておける事項です。

 ①公告方法、②事業年度、③利益配当の請求方法その他利益の配当の定め(注3)、
 ④社員の損益分配の割合の定め、 その他

(注3)出資比率と異なる利益配分を行うには、定款に定めなければなりません。定款に定めていない場合は、出資比率通りの利益配分となります。

5.設立までの手順(流れ)

合同会社の設立までの主な流れを図にしてみました。

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より詳しくお知りになりたい方へ参考HPの紹介

法務局HP 「持分会社設立」 : 定款や登記申請書の記載例や雛型が有ります

J‐Net21 中小企業ビジネス支援サイト : 中小企業基盤整備機構が運営する、中小企業のためのポータルサイトです。公的機関の支援情報を中心に、経営に関するQ&Aや数多くの企業事例などを簡単に調べることができます

6.まとめ

いかがでしたか、合同会社について少し理解していただけたでしょうか。

資金や物を提供した人だけではなく、「知識やノウハウ、技術、人脈など」を提供した人も利益を受け取れる仕組みを持った会社なのです。設立コストや手続きも少なく一人でも起業ができて、しかも株式会社と同じ間接有限責任だということです。ただし、社員(出資者)間の話し合いで意思決定を行うのですから社員(出資者)選びはしっかりと行いたいものです。意見の対立が起きてしまっては「合同会社」は、正常に機能しなくなってしまいますから。

起業を考えるのなら、貴方が「何をしたいのか」をより深く考えることから始めましょう。

  • 製作・販売・サービス、何を提供したいのか、
  • 最初の資金はどのくらいあるのか、
  • 力を合わせたい人達がいるのか、
  • 法人格は必要なのか、・・・

もし貴方が、「社長の肩書を持ちたい」、「自分で経営方針などを決めたい」などの考えをお持ちなら、株式会社や個人事業の方が良いでしょう。

※ 定款の記載内容に不備があった場合には定款が無効となり登記が通らないことも有りますので、税理士や司法書士、行政書士などの専門家へ相談されることをお勧めします。

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